不動産相続の手続き完全ガイド|10ヶ月でやったこと【実体験】

不動産相続

祖父とは、コロナ禍に入ってからはろくに会えていませんでした。サービス付き高齢者住宅に移ってからも定期的に顔を出していましたが、緊急事態宣言が出てからは面会自体が叶わなくなりました。

ただ、不動産賃貸業については、祖父からすでに概略を教えてもらっていましたし、電話でいつでも相談できていたので、大きな不安はなかったのです。大家業そのものも、当時すでに「大きな失敗なく無難にこなせるレベル」には達していたと思います。

そんな状況下で、お別れは唐突にやってきました。

ある日、サービス住宅の管理人さんから連絡が入りました。「肺炎(コロナではありません)が原因の高熱で、意識不明となり緊急入院されます」というものでした。病院のルールで面会にも行けないまま、祖父はそのままま意識が戻らずに2週間ほどで病院で亡くなりました。

私のショックは大きかったです。最後の何気ない会話も思い出せないくらい、本当に突然でした。

一方で、祖父は90歳を超えての大往生でした。晩年は旅行にもよく足を運び、充実した人生を送っていたのではないかと思っています。残された私たちにとっては突然のお別れでしたが、祖父自身にとっては悔いの少ない人生だったのではないかと。そう思うようにしています。

悲しむ間もなく、動き始めなければなりませんでした。不動産の相続には10ヶ月という期限があります。「何をどの順番でやればいいのか」が全くわからないまま、とにかく祖父が残してくれた書類を引っ張り出すところから始めました。

この記事では、私が実際に経験した不動産相続の手続きを時系列で公開します。「相続が発生したけど何から手をつければいいかわからない」という方に、少しでも参考になれば嬉しいです。

家族信託の準備が整っていた経緯についてはこちらの記事もあわせてご覧ください。

この記事でわかること

  • 相続発生直後から10ヶ月以内にやるべきことの全体像
  • 不動産賃貸業を引き継ぐ際の具体的な手続きの流れ
  • お金の流れの整理で本当に苦労したこととその教訓

相続発生直後の役割分担

葬儀が終わってすぐ、父と二人で「誰が何を担当するか」を決めました。父は葬儀後の役所手続きや親戚への連絡対応で手が塞がっていたので、不動産関係は自然と私が一手に引き受けることになりました。

担当内容
葬儀の手配、役所への届出、親戚対応
不動産関係・契約関係(賃貸、携帯、電気など生活インフラ含む)の整理すべて

「今後は不動産関係の仕事は全て自分らのみの責任でやる」と決めた瞬間、正直ちょっと怯みました。6棟・複数口座・複数の専門家・無数の契約。どこから手をつければいいか、本当に見当もつきませんでした。でも、誰かがやらなければなりませんし、祖父は必要な書類はしっかりと保管してくれていたので、まずはそれを整理していくことから始めました。


専門家への依頼

執行人(司法書士)への連絡

祖父は生前、遺言書として公正証書を残しており、その書類もしっかりと銀行の貸金庫に保管してありました。遺言執行人として司法書士の先生を指定しており、まずその先生に連絡を取ることから始まりました。

ここで「生前に専門家を決めておくことの大切さ」を痛感しました。もし執行人がいなかったら、「まず何から始めれば良いか」という段階で相当な時間を食っていたと思います。

司法書士の先生が担ってくださった主な内容はこちらです。

  • 相続登記(6棟すべての名義変更)
  • 金融機関との調整(残高証明書の取得など)
  • 相続発生後の入出金の振り分け(各物件の事業用口座へ)

この対応費用は総額で約50万円でした。正直「高いな」とは思いましたが、銀行相手の申込や登記手続きを自分でやろうとしたら時間的に絶対に無理(当時コロナ禍で窓口面会も絞られていた)でしたので、今となっては対価を支払って正解だったと思っています。

相続専門税理士への依頼

財産相続の執行は司法書士の先生で対応できましたが、相続税を適切に計算し、期日までに申告・支払いを行うことについては、税理士の専門分野になります。」

相続財産の額が大きくなることはわかっていたので、税理士にもしっかりとお願いしたいと考え、執行人の司法書士の先生のご紹介で、不動産相続に強い税理士を紹介いただきました。

紹介を受けてからの税理士さんとのやりとりについて、実際の流れはこんな感じです。

  • 必要書類を準備して送付(図面・レントロール・通帳・各種契約書など)
  • 不動産鑑定士による現地調査(税理士の先生から派遣)
  • メール・電話でのやりとりを複数回
  • 直接打合せ:最初と最後の2回+現地調査1回

費用は相続財産額の1%でした。後で相場を調べてみたら比較的良心的な価格でした(追加で諸費用を請求されるケースも多いらしく、トータルで見れば安かった方だと思います)。

賃貸に出している物件は評価額が下がる、土地の形状によっても減額できる、相続人に障害者がいる場合は減免ができる——こういった節税ポイントは、素人が短期間で自分でやろうとしてもまずできません。不動産相続に強い税理士さんに任せたことで、過剰な相続税を払いすぎずに済んだと思っています。


不動産賃貸業の承継 事業用口座の整備

不動産賃貸業について、祖父の生前は祖父の事業用講座1つで全物件の出入金を管理していましたが、相続発生後は物件ごとに受益者(利益を得る人物)が異なります。

各物件ごとに事業用口座を相続人名義で新たに開設し、当面の経費支払いに備えて1口座あたり約50万円を入金してもらいました。突発的な修繕や諸経費に対応するための手元資金です。

「口座を新しく作るだけ」と思っていたら、銀行によって手続きの煩雑さがまったく違って少し驚きました。ここも専門家がいてくれたので、スムーズに進みました。


不動産賃貸業の承継 お金の流れ・契約の整理

正直、これが一番きつかったです(泣)

手続き全体の中で、圧倒的に時間がかかったのがお金の流れの洗い出しです。数年分の通帳の入出金履歴をすべて精査して、「これは何の引き落としか」「誰名義の契約か」を1件ずつ確認していく作業でした。クレジット会社に明細を取り寄せるだけでも何週間もかかりました。

入金の整理

  • 各物件の家賃入金先の確認と名義変更
  • 管理会社への振込先変更の連絡
  • 入居者への新口座案内(既存入居者全員分)

出金の整理

  • ローン返済・火災保険・管理費などの自動引落先を上記の新口座に切替
  • 祖父の生活に紐づいた契約(携帯電話・NHK・クレジットカードなど)の解約・名義変更
  • どこの何の引き落としか不明なものを1件ずつ調査

「不動産関係だけ整理すれば終わり」ではなく、祖父の生活全体に紐づいた契約が山ほどありました。「これ何の引き落としだろう」と首を傾げながら調べた件数は、今思い出しても気が遠くなります。

不要な契約は死亡届の提出(不要な場合もあった)をしながら解約し、不動産関係で必要な契約は適切に名義変更しました。契約は可能かなぎり私名義に集約しました。今後の問合せや契約変更、書類送付先も私で全部扱っておくことが最も手間が少ないと考えてのことでした。


相続後 予想外の出費

一つ予想外だったのが、不動産取得税の課税です。相続手続きが完了してしばらくしてから、私と妹に対して、不動産取得税の支払書が届きました。私と妹ついては正式な相続人ではないため、遺贈という形で不動産資産の一部を受け取っていました。相続に対してはかからない不動産取得税ですが、遺贈分に対してはしっかりと課税されるということを事前に把握できておらず、想定外のコストになりました。同じような状況の方は、事前に確認しておくことをおすすめします。


実際にやってみての感想

「専門家なしでは絶対に無理だった」と実感

税理士・司法書士の両方に依頼していなければ、不動産や公正証書の関わる相続を10ヶ月の期限内に完了させることは絶対に無理でした。断言できます。費用はそれなりにかかりましたが、それ以上に時間と精神的な負担を肩代わりしてもらえたと思っています。

「専門家に頼むのはお金がもったいない」という感覚もわかりますが、不動産の相続は規模が大きいほど専門家が必要です。節税できた金額、対応の手間を考えると、依頼費用の何倍もの価値がありました。

家族間の揉め事はゼロでした

「相続は争族になる」という言葉をよく聞きますが、我が家はまったくそうなりませんでした。これは祖父が生前に家族信託・公正証書・養子縁組などの準備を丁寧に整えてくれていたおかげです。

遺産の分け方に疑問を持つ余地がないくらい、すべてが明確に決まっていました。それが家族の関係を守ってくれました。祖父の準備の深さに、今でも頭が下がります。


まとめ

実際にやってみてわかった、相続で慌てないための3つのことをお伝えします。

① 相続が発生したらすぐに専門家に連絡する
10ヶ月という期限は、実際に動き始めると本当にタイトです。「まず誰かに連絡する」を最優先にしてください。可能であれば、相続税の申告を委託する税理士も事前に決めておくと安心です。

② お金の流れは生前に把握しておく
入出金の洗い出しが最も時間がかかります。元気なうちに口座・契約・引き落としを整理しておくだけで、残された家族の負担が大幅に減ります。

③ 生前の準備が家族の関係を守る
家族信託・公正証書・養子縁組など、ルールを決めておくことが揉め事を防ぐ唯一の対策です。「うちは大丈夫」と思っているうちにやっておくのが正解です。

相続税の対策として行った不動産新築についてはこちらの記事もあわせてご覧ください。

※ この記事は実体験をもとにした情報提供を目的としています。相続手続きの詳細については、税理士・司法書士などの専門家へのご相談をおすすめします。

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