祖父は元気なうちに実家を離れ、サービス付き高齢者向け住宅に移り住んでいました。コロナ禍に入る直前、肺炎で体調を崩して入院し、約半年後に亡くなりました。コロナ禍という状況もあり、満足に面会できないまま迎えた別れは心残りでしたが、不動産に関しては生前から十分な準備をしてくれていたおかげで、慌てることなく対応を進めることができました。
この記事でわかること
- 相続発生直後から10ヶ月以内にやるべきことの全体像
- 不動産賃貸業を引き継ぐ際の具体的な手続きの流れ
- お金の流れの整理で苦労したこととその対策
家族信託の準備が整っていた経緯についてはこちらの記事もあわせてご覧ください。
相続発生直後の役割分担
まず家族内で対応を分担しました。
| 担当 | 内容 |
|---|---|
| 父 | 葬儀の手配、役所への届出 |
| 私 | 不動産関係・契約関係の整理 |
不動産関係の実務は私が一手に引き受けました。以下、その詳細をお伝えします。
専門家への依頼
執行人(税理士)への連絡
祖父が生前に作成していた公正証書には、執行人として税理士の先生が記載されていました。相続発生後すぐに連絡を取りましたが、コロナ禍かつ先生が高齢だったこともあり、代理対応を依頼されました。そのため、家族信託や公正証書の作成でお世話になっていた司法書士の先生に対応を引き継いでいただきました。
相続専門税理士への依頼
相続財産の額が大きくなるため、司法書士の先生のご紹介で不動産相続に強い税理士に依頼しました。
依頼後の流れはおおむね以下の通りです。
- 必要書類を準備して送付(図面・レントロール・通帳〈生活口座・事業口座〉・各種契約書など)
- 物件の現地調査(税理士先生より派遣された不動産鑑定士さんによる)
- メール・電話でのやりとりを複数回
- 直接の打合せ:最初と最後の2回+現地調査1回
費用は相続財産額の1% でした。相場について確認するまもなく紹介された税理士の先生に依頼してしまいましたが、後日ネットで調べると比較的良心的な価格でした(+αで諸費用を請求されることも多いとのこと)。個人的には、不動産相続の複雑さを考えると、専門家に任せる価値は十分にあると感じています。賃貸に出している、土地形状、周辺環境による資産評価額の減額など、税理士さんに任せたからこそのメリットもあります。
気になる方は生前からどこに依頼するか、事前に調べて決めておくことをおすすめします。
事業用口座の整備
各物件ごとの事業用口座を相続人名義で新たに開設し、当面の経費支払いに備えて1口座あたり約50万円を入金してもらいました。(突発的な修繕費や諸経費に対応するための手元資金)
お金の流れの整理 (最も大変だった作業)
相続手続きの中で最も手間がかかったのが、お金の流れの全体把握と整理でした。数年分の通帳の入出金履歴をすべて精査し、各項目の契約者名義変更(祖父→物件の受託者)・引き落とし口座の変更(各物件ごとに新設した銀行口座)を進めました。
入金の整理
- 家賃収入
- 太陽光売電収入
出金の整理
- 借入金返済
- 火災保険料
- 共用部分の光熱費
- JCOM(ケーブルテレビ)
- 固定資産税
- 修繕費 など
なお、新築した物件のローンについては父母が引き継ぎ、私と妹は共同担保提供者という形になりました。
相続の執行
お金の流れを整理した上で、いよいよ相続を実行しました。執行人(司法書士)が中心となり、以下の形で財産を振り分けました。
- 不動産登記の実行
- 祖父名義の預金残高については基本的に叔母へ
- 相続発生後の入出金分については、各物件の事業用口座に執行人が振り分け
これら司法書士の先生に依頼した費用は総額で50万円だったと記憶しています。物件数が多く、銀行口座の対応などもお任せしましたので、少しお金はかかりましたが、お堅い銀行の相手などは専門家に任せた方が、圧倒的に楽だと思います。
また、私と妹については遺贈分に対して不動産取得税が課税されました。これは事前に把握できていなかった点で、想定外のコストでした。同様の状況の方はあらかじめ確認しておくことをおすすめします。
実際にやってみての感想
お金の流れの洗い出しが想像以上に大変だった
不動産関係だけでなく、祖父の生活に紐づいた契約(自宅・電話・NHK・クレジットカードなど)も含めると、解約・名義変更が必要なものが多く、非常に手間がかかりました。クレジット会社に明細を取り寄せる作業だけでも相当な時間を要しました。
税理士・司法書士の両専門家に依頼していなければ、相続申告の期限である10ヶ月以内に対応を完了させることはとても無理だったと断言できます。相続が発生した際には、早い段階で専門家に相談することを強くおすすめします。
不動産をお持ちの方であれば、生前にどこに依頼するか決めておくことをおすすめします。
家族間の揉め事はゼロだった
遺産の相続については、祖父が生前に家族信託・公正証書・養子縁組などの準備を丁寧に整えてくれていたおかげで、家族間で一切のトラブルなく、スムーズに相続を完了することができました。
「相続は争族になる」という言葉をよく耳にしますが、我が家は全くそうなりませんでした。これはひとえに祖父の思いやりと生前の丁寧な準備の賜物です。あらためて感謝しています。
まとめ
相続発生時に慌てないための3つのポイントをお伝えします。
① 早めに専門家(税理士・司法書士)に連絡する
10ヶ月という期限は、実際に動き始めると非常にタイトです。相続発生後すぐに連絡することが鉄則です。
② お金の流れを生前から把握しておく
入出金の洗い出しが最も時間がかかります。被相続人が元気なうちに、口座・契約・引き落とし状況を整理しておくと大幅に楽になります。
③ 事前準備が家族の関係を守る
家族信託・公正証書・養子縁組など、生前にルールを決めておくことが、相続時の揉め事を防ぐ最大の対策です。
相続税の対策として行った不動産新築についてはこちらの記事もあわせてご覧ください。
※ この記事は実体験をもとにした情報提供を目的としています。相続手続きの詳細については、税理士・司法書士などの専門家へのご相談をおすすめします。


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