親子3代で家族信託契約を結んだ話|複雑な家族事情でもスムーズに承継できた理由

不動産相続

不動産を次の世代にスムーズに引き継いでいくために、我が家では祖父が元気なうちに家族信託契約を締結しました。

この記事でわかること

  • 家族信託とは何か、なぜ我が家で必要だったのか
  • 受益者・受託者の設定をどう決めたか
  • 複雑な家族事情でも家族信託が有効な理由

はじめに

「家族信託」という言葉を聞いたことはあっても、実際にどういうものか、どうやって進めるのかがわからない方も多いのではないでしょうか。祖父以外は我が家も最初は全員が「なんのこっちゃ」という状態からのスタートでした。

この記事では、我が家が家族信託を選んだ理由と、実際にどのように進めたかをお伝えします。

不動産6棟の相続全体の流れについては、祖父から不動産6棟を引き継いだ話もあわせてご覧ください。

そもそも家族信託とは?

家族信託とは、財産(今回の場合は不動産)の管理・運用・処分を、信頼できる家族に託す仕組みです。

登場人物は主に3者です。

  • 委託者:財産を預ける人(我が家では祖父)
  • 受託者:財産の管理・運用を任される人(我が家では私・妹)
  • 受益者:財産から生じる利益を受け取る人(我が家では祖父→父・母・叔母→私・妹)

受託者になると、取引先との契約締結や物件の管理判断など、不動産事業における本格的な意思決定の権限を持つことになります。一方で受益者は、不動産の管理には関わらずに収益だけを受け取ることができます。

つまり「不動産の収益は受け取りたいけれど、管理には関わりたくない(関われない)」という家族がいる場合に、受託者である身内が代わりに管理・運営を担うことができる、非常に融通の利く仕組みです。

なぜ我が家で家族信託が必要だったのか

家族のそれぞれの想い、事情は以下の通りでした。

祖父(委託者)

不動産賃貸業を長年営んできており、自分亡き後も、子から孫へと順当に不動産を承継させたいという意向が明確にありました。

一方で祖父が相続を考えるにあたって、最も心を砕いていたのが叔母の将来についてでした。

叔母は後天的な障がいにより、当時すでに意思疎通が難しい状態でした。夫とも死別し、子どももいない状況で、祖父自身が後見人を務めていたため、「自分が先に逝ったら、叔母の生活はどうなるのか」という不安は、晩年の祖父にとって最大の懸念事項だったといいます。

この懸念を解決する手段が「不動産の家族信託」という仕組みでした。

不動産の賃料収入は、安定して毎月入ってくる「生活費」です。祖父は叔母に一部物件の受益権を設定することで、自分が亡くなった後も叔母が毎月一定の収入を受け取り続けられる仕組みを整えました。叔母自身が管理や判断をする必要はありません。受託者である私・妹が代わりに管理し、収益だけが叔母のもとに届く形です。

父・母

不動産にあまり関心がなく、「管理は任せるが、収益は受け取れれば・・・(別にもらわなくとも)」というスタンスでした。積極的に不動産事業に関わる意思はないという考えです。

私・妹

一般人の素人でしたが、素人目にも価値ある不動産資産であったため、祖父のノウハウを引き継ぎ、不動産賃貸業を引き継ぐ意思を固めました。祖父の叔母への思いも含め、半分奉仕の心で受託者の立場を引き受けました。(自身へのリターンは将来的)

通常の相続では、こうした複雑な事情がある場合に「誰が管理するのか」「収益はどう分配するのか」といった問題が発生しやすくなります。家族信託はこれを事前に整理しておくための有効な手段でした。

我が家の家族信託の設計

関係者全員で話し合い、合意を取った上で以下の形に決まりました。

受託者(管理・運営を担う人):私・妹

受益者(収益を受け取る人)は、以下の順で設定しています。

凡例: 祖父叔母私(著者)
▌ 家族信託対象:物件①〜④
受託者(管理・運営):
物件 第一受益者 第二受益者 第三受益者
物件① 祖父 叔母
物件② 祖父 叔母
物件③ 祖父 父・母
物件④ 祖父 父・母
※ 第三受益者への承継をもって信託終了。受益者の承継順は公正証書で確定済み。
▌ 家族信託対象外:物件⑤・⑥(直接相続・遺贈)
物件 承継の形 取得者(持分) 備考
物件⑤ 相続・遺贈 父 1/2 私 1/2(遺贈) 法定相続人外の私は遺贈
物件⑥ 相続・遺贈 母 1/2 妹 1/2(遺贈) 法定相続人外の妹は遺贈
※ 私・妹は法定相続人ではないため(孫であり直系卑属)、遺言による遺贈の形で取得。

各物件ごとに受託者と受益者を設定し、2次相続まで見据えた設計にしました。(孫の世代まで不動産の相続を確定させる)

この設計により、以下の課題がすべて解決されました。

  • 祖父が亡くなった後も、私・妹が受託者として不動産管理を継続できる
  • 叔母はもちろん、父・母は管理に関わらず、第二受益者として収益を受け取れる
  • 意思疎通が難しい叔母も、受益者として生活の支えとなる収益を受け取れる
  • 最終的には私・妹が第三受益者として不動産を承継できる

ちなみに、一般的な信託契約には、受託者に対する信託報酬を支払うことが通常ですが、我が家のケースでは受託者への報酬は定めていませんでした。祖父の生前は手伝ったことに対して、お小遣い的に報酬があった程度です(月数千円〜数万円程度。)一般的には相応の報酬を支払うべきと思います。

実際の手続きはどう進めたか

家族信託の契約書作成は、地元の司法書士さんに依頼しました。祖父が地元のセミナーで知り合った方で、その後も長くお世話になっています。

進め方としては以下の流れでした。

  1. 家族全員で現状と意向を整理する
  2. 司法書士さんに相談し、意向に沿った設計の方向性を固める
  3. 司法書士さんが契約書案を作成する
  4. 司法書士さんからの解説付きで全員が内容を確認する
  5. 公正証書として締結する
  6. 物件に信託内容を登記する

特に大切だったのは、関係者全員が内容を理解した上で合意を取るというプロセスです。家族信託は仕組みがやや複雑なため、一部の家族だけで進めてしまうと後々トラブルの原因になりかねません。我が家では祖父が丁寧に説明の場を設け、全員が納得してから進めました。

この時に掛かった費用は祖父が全額負担してくれましたが、ニュアンスとしては「100万はいかん。それなり。」とのことで、50万円くらいだったのかなと思います。

家族信託を結んでみて感じたこと

実際に受託者となった立場から感じたことを正直にお伝えします。

良かった点

  • 祖父が亡くなった後も、不動産の受益、管理運用の権限が明確になっていたため混乱がなかった
  • 叔母のように意思決定が難しい家族がいても、仕組みとして対応できていた
  • 父・母が管理に関わらなくて良い状態が整理されていたため、家族間のトラブルが少なかった
  • 孫の世代までの相続を確定できていること

難しかった点

  • 契約書の方針を決めるまでの話し合いに時間がかかった
  • 家族それぞれが契約の内容、役割をきちんと理解するのに苦労した
  • 多少の費用が掛かった

のちのち後悔した点

  • 相続する不動産の分け方が歪だった(配置が互い違いとなっており微妙)
  • 信託報酬を設定しておくべきであった
  • 信託口座を明記しておくべきだった

詳細は別記事にまとめます。

まとめ

家族信託は、複雑な家族構成や事情がある場合にこそ、その真価を発揮する仕組みだと感じています。

特に以下のようなケースでは、家族信託を検討することをおすすめします。

  • 不動産管理に関わりたくない家族がいる(でも収益については相応に欲しい)
  • 判断能力が低下している家族がいる
  • 2次相続・3次相続まで見据えた承継をしたい
  • 相続人が複数いて、管理者を明確にしておきたい

我が家の場合は、祖父が元気なうちに準備を始めてくれたことがスムーズな事業承継に何よりも効果的でした。「そのうち考えよう」と後回しにしていたら、こうはいかなかったと思います。

家族信託の詳細な設計や手続きについては、専門家(司法書士・行政書士)の協力が不可欠です。不動産関係に実績のある専門家(できれば近隣)に早めに相談することをおすすめします。

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