家族信託の契約書を締結しても、その後に「実際の運用をどうするか」は別の話です。契約書は骨格にすぎず、日々の管理・収支の把握・確定申告まで、実務の中身は自分たちで作っていく必要があります。
この記事では、管理物件が複数あり、受益者も複数に分かれているという我が家の状況で、実際にどのように不動産賃貸業の管理運用を行っているかをお伝えします。なお、家族信託の対象は物件①〜④です。物件⑤は父・私が1/2ずつ相続(私は遺贈)、物件⑥は母・妹が1/2ずつ相続(妹は遺贈)、相続税対策として新築した木造戸建2棟は家族信託の対象外となっています。なお、家族信託の契約内容については我が家で結んだ家族信託の契約概要もあわせてご覧ください。
この記事でわかること
- 相続発生前後の銀行口座をどう整理したか
- 不動産管理会社との運用ルールの決め方
- 確定申告・収益分配の実務的な進め方
1. 銀行口座の整理——相続前後で大きく変わった
相続発生前
祖父が存命中、不動産事業用の口座は祖父名義で1つのみでした。すべての物件の収支がひとつの口座に集約されていたため、物件ごとの収支把握は正直なところ大雑把でした。
祖父が亡くなった後、担当の行政書士の先生と相談し、この口座の解約は意図的に遅らせてもらいました。相続手続きの過程で口座が凍結・解約されると実務上の支障が出るケースがあるため、タイミングを見計らって対応しました。
相続発生後
相続後は、受益者ごとに事業用の普通預金口座を新たに開設しました。
物件ごとに受益者が異なる我が家の場合、口座を受益者単位で分けることで、誰の収益がどれだけあるかを明確に把握できるようになりました。家賃の振込も各口座に集約し、経費の支払いもそれぞれの口座から行うことで、収支管理がシンプルになりました。
(本当はイケナイことですが)この事業用の銀行口座については、通帳・キャッシュカードとも受託者である私が保有、管理しており、適宜支払いや入金確認を行っていました。
ポイント:口座は必ずしも物件ごとに分ける必要はありません。受益者ごとに分けるだけで十分に管理しやすくなります。
2. 不動産会社への管理委託
祖父の時代は自主管理でしたが、相続後は地元の不動産管理会社に管理を委託しました。管理を委託した先は祖父が生前に紹介してくれた中で、一番仲介実績が多く、先代からの繋がりがある、免許番号(6)の地場の不動産会社(管理、売買仲介、賃貸仲介)です。
※相続税対策で新築したサブリース物件についてはそのままサブリースを継続しています。
本業の仕事を持ちながら複数棟を管理するのは現実的ではありません。管理委託料は家賃収入の5%で、決して安くはありませんが、必要な経費として割り切っています。
3. 管理会社との運用ルール
不管理会社との間で明確な運用ルールを決めることが重要です。我が家では以下のように整理しました。
家賃の入金フロー
借主さんからの家賃はいったん管理会社に集約され、そこから管理費5%や少額の費用を差し引いた上で、各物件の口座に入金されます。
10万円未満の少額支出はお任せ
退去後の清掃費用(約4万円)、鍵の紛失対応(数千円)、植栽の剪定費用(約7万円)など、少額の支出については管理会社に発注もお任せしています。家賃との相殺額が口座に入金される形で、見積書・納品書は別途添付してもらっています。
都度確認していては、お互いにとって手間がかかるだけです。金額の基準を決めておくことで、スピーディに対応できます。
10万円以上の支出は発注前に私の判断を仰いでもらう
エアコンや給湯器の更新など、10万円以上の支出については、発注前に必ず見積もりをもらった上で私が実施を判断するルールとしました。必要に応じて管理会社に相見積を依頼したり、自分で修繕業者を探すこともあります。
参考までにこれまでで最大の支出は、木造2階建アパートの外壁塗装で170万円でした。管理会社さん紹介の業者さんでは220万円の見積でしたが、さすがにもう一社見積が必要と思い、合意のもと私でもう一社見積をお願いし、安価に費用を抑えることができました。
月次報告
入金報告はPDFにまとめてメールで受け取ります。物件ごとに内容が整理されているため、収支の把握が容易です。報告は毎月必須とはしておらず、四半期ごとを目処にお願いしています。
4. 口座残高の管理
各事業用口座には、常に50万円程度を残すよう意識しています。
突発的な修繕費や設備の更新費用に備えるためです。不動産管理は「いつ何が起きるかわからない」という前提で、手元資金を一定額確保しておくことが安心感につながります。
5. 確定申告の分担
毎年の確定申告については、以下のように分担しています。
| 対象 | 対応方法 |
|---|---|
| 叔母の分 | 税理士に依頼 |
| 父・母・妹の分 | 私が情報整理してe-Taxで申請 |
叔母については障がいがあり本人での対応が難しいため、税理士に依頼しています。その他の家族分については、私が各口座の収支データを整理した上でe-Taxで白色申告しています。
6. 収益の分配
確定申告後に残った収益については、各受益者の要望に応じて分配する方針です。
ただし、父・母・叔母ともに生活費に困る状況ではないため、これまで一度も各々の生活費として出金したことはありません。収益は各口座に積み上がっており、将来の大規模修繕や設備更新の資金として位置づけています。
まとめ
① 事業用の口座は受益者ごとに分けるのがやり易い
複数棟・複数受益者の場合、物件ごとに口座を分ける必要はありませんが、最低限受益者ごとに口座を分けることで収支の把握が格段にしやすくなります。相続発生後は早めに整理することをおすすめします。
② 管理会社との運用ルールを事前に決めておく
少額の支出を含めて都度確認を求めていては、お互いに手間がかかります。「いくら以上は自分が判断する」というルールを決めておくだけで、日々の対応がスムーズになります。
③ 手元資金は常に一定額を確保する
突発的な支出に備えて、各口座に最低限50万円程度の資金を常に残しておくと安心です。不動産管理は想定外の出費がつきものです。
※ この記事は実体験をもとにした情報提供を目的としています。口座管理・確定申告の詳細については、税理士・行政書士などの専門家へのご相談をおすすめします。


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