この記事では、祖父が実際に行った相続税対策として、駐車場に木造戸建を新築した経緯と結果をリアルにお伝えします。
この記事でわかること
- 相続税対策として賃貸物件を新築するという選択肢の実態
- ハウスメーカー3社のプランを比較した結果と判断の理由
- サブリース契約の実際のメリット・デメリット
- 新築による相続税対策の効果と率直な振り返り
はじめに
祖父が生前に行った相続対策のひとつが、所有していた駐車場に賃貸物件を新築することでした。「相続税対策として不動産を建てる」という話はよく聞きますが、実際にどんなプロセスで進み、結果はどうだったのかをリアルにお伝えします。
なお、この新築物件(木造戸建2棟)は家族信託の対象外です。家族信託の対象は物件①〜④であり、本物件は相続税対策として祖父が個人名義で建築・ローンを組んだものです。家族信託の全体像についてはこちらの記事もあわせてご覧ください。
1. なぜ新築することにしたのか
当時の祖父の試算では、このままでは1千万円弱の相続税が発生する見込みでした。所有資産の約9割が不動産という構成のため、遺す現金で納税できるか、微妙な状況でした。
不動産の賃貸評価額は時価よりも低く算定されるため、駐車場に賃貸物件を建てることで相続税評価額を下げる効果が期待できます。祖父はこの判断を我々家族に丁寧に説明してくれ、家族全員が同意した上で新築の検討をスタートしました。
2. ハウスメーカー3社への相見積もり
祖父は3社のハウスメーカーに対してプランの提案を依頼し、家族全員で内容を確認しました。
| ハウスメーカー | プラン概要 | 特徴 |
|---|---|---|
| S水ハウス | 軽量鉄骨アパート(1棟8戸) | 初期投資大・見込みリターン大 |
| Pナホーム | 木造アパート(1棟4戸) | 中間的なプラン |
| Mサワホーム | 木造戸建(2戸+各駐車場2台) | 初期投資小・リターンはほどほど |
S水ハウスとMサワホームはサブリースプランも用意していました。
3. Mサワホームのプランに決めた理由
3社のプランを比較した結果、最終的にMサワホームの木造戸建2棟プランを選択しました。
決め手は相続人側の強い希望です。「ローリターンであってもローリスクのプランにしたい」——借金を背負うことへの不安が大きかった我々家族は、初期投資を抑えて堅実に経営できるプランを最優先しました。
今の知識で振り返れば、もっとプランを詳細に詰めるべきだったと思う部分もあります。しかし当時の祖父が家族の気持ちに寄り添ってくれた判断だったと、感謝しています。
4. 建築・ローンの詳細
建築費用
造成費・外構費込みで1戸あたり2,000万円強(2棟合計で4,000万円超)。
ローン条件
ハウスメーカー紹介のニッセイ信用保証を利用し、以下の条件でフルローンを組みました。
- 返済タイプ:10年固定→変動タイプ、返済期間30年
- 金利:固定期間1.09%(当時の低金利水準)
- 80歳を超えていた祖父に対して、相続を前提とした条件設定(団信なし)。返済期間30年は木造の法定耐用年数22年を超える好条件でした。
工事スケジュール
- 2月:契約
- 5月:着工
- 12月:竣工(工事期間約8ヶ月)
- 翌2月:サブリース開始
5. サブリース契約の実際
契約のポイント
サブリース手数料は家賃収入の10%。通常、サブリース賃料の見直しは2年ごとに設定されますが、祖父が粘り強く交渉した結果、最初の10年間は賃料見直しなしという特約を勝ち取りました。これは収支の安定という観点から非常に大きなメリットでした。退去発生時は1ヶ月分家賃納付がなしという条件で、退去後2ヶ月目以降は入居があろうがなかろうが、家賃納付ありという条件です。
実際の入居状況
新築後、入居自体はスムーズに決まりましたが、コロナ禍で入居者が退去した後は約半年の空室期間が生じました。ただしサブリース契約のため、実質的な空白は1ヶ月分のみで、その後は安定して賃料が振り込まれています。10年間の期間で、退去は合計3回、実際の空室期間は9ヶ月程度(概算)で、入居率は98%以上と思われます。
6. 相続税対策の結果
新築・ローン設定・サブリース契約を組み合わせた結果、当初1千万円弱と試算されていた相続税は実際ベースで100万円強まで圧縮することができました。(叔母の障がい者控除の影響も大きいですが)
相続税対策としての不動産新築という手法が、結果として機能したといえます。
7. 率直な振り返り
収支としては無難に回っている
賃貸需要の旺盛なエリアだったこともあり、新築した戸建物件の不動産賃貸業としての収支は安定しています。返済比率も非常に低く推移しており、経営的には問題ない水準です。
投資としての妙味は低い
一方で、土地の価値を除いた表面利回りで一般的な新築アパート投資の目安である7〜8%を下回る水準です。純粋な不動産投資として見た場合、妙味があるプランとはいえません。相続税対策という目的があったからこそ成立した判断です。
安易に真似してはいけない
借金を抱える怖さは、実際に経験して初めてわかりました。良い経験にはなりましたが、知識のない状態でかなり大きなリスクを取っていたとも感じます。
本来であれば、建築コスト・賃料設定・空室リスク・出口戦略まで、もっと詳細にプランを詰めた上で判断すべきでした。立地に恵まれていたから結果オーライでしたが、条件が少し違えば苦しい状況になっていたかもしれません。
まとめ
| 項目 | 評価 |
|---|---|
| 相続税対策としての効果 | ◎ 1千万円弱→100万円強に圧縮 |
| 収支の安定性 | ○ 返済比率低くCFは安定推移 |
| 投資としての妙味 | △ 表面利回り7%以下 |
| リスクへの備え | △ もっと詳細に詰めるべきだった |
賃貸物件の新築による相続税対策は、エリアの賃貸需要・建築コスト・ローン条件・出口戦略がすべてかみ合ったときに初めて有効な手段となります。そのためには相続する側の努力と知識、物件自体の魅力が必要で、「相続税が減る」という一点だけで判断するのは危険です。
専門家を交えて十分に検討した上で、慎重に判断することをおすすめします。
相続税対策の全体像についてはこちらの記事もあわせてご覧ください。
※ この記事は実体験をもとにした情報提供を目的としています。不動産の取得・建築・ローンに関する判断は、税理士・ファイナンシャルプランナーなどの専門家へのご相談をおすすめします。


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