ローンを一括返済する時の判断基準について

2025年11月、相続対策として建てた新築木造戸建2棟のアパートローンを一括返済しました。残債は約3,000万円でした。

ローンは、銀行が物件担保やオーナーの与信をもとに長期にわたってお金を貸してくれるありがたい仕組みです。世の中には「ローンは一刻も早く返すべき派」と「借りられるだけ借りてなるべく引き延ばす派」がいると思います。

結論からいうと、一括返済すべきかどうかは自身の価値観によるというのが私の考えです。私の事例が読者の判断材料になれば幸いです。

一般論としてのメリット・デメリット

メリット

  • 将来支払うはずだった金利分の経費削減
  • 精神的な圧迫からの解放

デメリット

  • 手元資金の減少(それによる運用益=イールドギャップの逸失)
  • 金利分の経費削減に由来する収益増による納税額の増加
  • 解約違約金や手数料がかかる

重要なのは、そろばんで計算できる経済的な指標と、感情的な指標という2つの判断軸があるということです。どちらか一方だけで判断すると、後悔することになります。

私のケース(経済的メリット)

ローンの条件

項目内容
金融機関ニッセイ信用保証(ハウスメーカー提携ローン)
契約者祖父(連帯保証人として父が連名)
借入額2棟で約4,400万円
借入開始2015年1月
返済期間30年
返済方式元利均等
金利10年固定0.9%→その後変動(短期プライムレート−0.9%の優遇金利)

金利の推移と返済額の変化

時期金利月々の返済額うち金利分
固定期間中0.9%約15万円3〜3.6万円
2025年1〜6月1.925%——
2025年7月〜2.175%約16.3万円5〜6万円

固定期間が終了したタイミングが、ちょうど長年維持されていたゼロ金利政策が解除された時期と重なりました。金利分の負担が月3万円台から5〜6万円へと大きく増加しています。

一括返済時の条件

  • 残債:約3,000万円
  • 違約金:残債の2%(約60万円)
  • 残存返済期間:19年
  • 削減できる金利:金利2.175%のままでも約600万円

19年間で金利削減600万円ー手数料60万円=540万円が経済的なメリットです。(現在価値に割り戻すとより正確)

一括返済に踏み切った2つの理由

① 父の資産状況と資産運用への意向

父は株式等での資産運用を行う気が皆無で、現預金のみを溜め込んでいる状態でした。

株式投資のように利益が不確実なものには否定的な父も、確実に金利分の経費が削減できる一括返済についてはOKという反応でした。

また、残債約3,000万円を返済しても、生活防衛費をしっかり確保できる資産状況だったことも大きな判断材料になりました。

② 諸々考えることが負担だった

これは感情的な指標です。

  • 金利が上がりそうな雰囲気が気になってそわそわする(実際、当時から0.5%上がっており、今後さらなる上昇も見込まれる状況)
  • 戸建賃貸なので入居者が抜けた瞬間に家賃収入がゼロになる。残債があるとそれなりのキャッシュを確保しておく必要がある

こうした「気になること・考えること」が心理的な負担になっていました。残債をゼロにしてスッキリさせたい——この気持ちが、経済合理性の計算と同じくらい大きな判断要素でした。

結果:削減効果はさらに大きくなっていた

一括返済を決めた当時は「約600万円の金利削減」と見込んでいました。しかしその後の金利上昇により、状況が変わっています。

金利シナリオ削減できる金利総額
当時の見込み(2.175%継続)約600万円
現在の金利条件約800万円
さらに金利上昇が続いた場合約1,000万円

金利上昇のスピードが想定より速く、結果として一括返済の判断はより大きなメリットを生むことになりました。

一括返済してみての正直な感想

個人的には一括返済に踏み切って良かったと思っています。

金利動向には引き続き注意を払っていますが、「上がらないでくれ」と祈る必要がない状況はとても心地よいです。数字には表れませんが、この精神的な安定は想像以上に価値がありました。

一方で、経済合理性だけを見れば別の見方もあります。一括返済せずにイールドギャップ(借入金利と投資利回りの差)を取り続ければ、より速いスピードでの資産拡大は見込めたはずです。

しかし、私たち家族の目的は資産の最大化ではありません。相続した土地をしっかりと守って次の代まで繋ぐことです。

多少の非合理性があっても、安定を選んだことに後悔はありません。

手続きにかかった時間

大金が動くことなので、家族の話し合いには時間がかかりました。しかし全員の合意が取れてからは、約2ヶ月程度で手続きが完了しました。

一括返済の手続き自体はそれほど複雑ではありません。時間がかかるのは意思決定の部分です。

一括返済しない判断もあり

一括返済できる=手元に潤沢な余剰資金があるという状況です。真っ当に資産運用を行えば、期待利回りも取れるわけで、仮に株式投資の期待利回りを7%とすると、3,000万円×(期待利回り7%ー金利2.5%)=年間130万円程度のイールドギャップを狙えることも事実です。

返済に対して精神的な負担がない、経済的合理性を重視する、という価値観であれば、手元資金を一括返済に回さずに、自身で金利以上の利回りで運用して資産の最大化を目指すことも、合理的な選択だと思います。

まとめ

① 一括返済すべきかは価値観による
経済合理性だけで判断できるものではありません。「資産の最大化」を目指すのか「安定と安心」を重視するのかで答えが変わります。

② 手元資金の余裕があることが前提
返済後も生活防衛費と事業の運転資金が確保できることが最低条件です。

③ 金利上昇局面では削減効果が大きくなる
残存期間が長いほど、わずかな金利上昇でも総利息への影響は複利的に膨らみます。

④ 精神的な安定という価値も判断材料にしてよい
「気にしなくてよくなる」ことの価値は、数字に表れなくても確かに存在します。

安心のための一括返済は悪くない——これが私の実感です。ご自身の目的と価値観に照らして判断されることをおすすめします。

※ この記事は実体験をもとにした個人の考え方をまとめたものです。ローンの返済判断については、金融機関やファイナンシャルプランナーへのご相談をおすすめします。

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